カンボジア

パスポート紛失後、シェムリアップへとUターン。

タイに渡るため、カンボジアから国境までバスまで向かったのに、パスポートを紛失して引き返さざるを得なかったのが前回までの話。

 

パスポート紛失の事実を受けて、国境で呆然となる僕。

 

「どうしよう、でも今パスポートを持っていないのならとりあえず戻るしかない。」

 

でもこちらに乗ってきたバスはすでに姿はなく、まずは4時間かけて来た道を戻る手段を探さなければいけない。

 

国境のスタッフにシェムリアップに戻る道はないかと聞いてみても、知らないの一点張り。

 

彼らにとって、自分の仕事以外の関心はない。

 

自分の仕事だって、面倒臭いと思っているくらいだから。

 

とりあえず来た道を引き返して歩く。

 

バッグパック2つ、前後に抱えて25キロ。

 

気温35度の中背負って歩くには、身体にこたえる、汗が噴き出す。

 

バスチケットの代行会社がいくつかあったが、すでに今日の便の予約は終了とのこと。

 

こうなるとバスが発着する場所まで直接行ってみて、空きがあるか聞かなければいけない。

 

トゥクトゥクのあんちゃん、バイタクのおじさんにバスの発着所まで行けるか聞いてみる。

 

欧米のバックパッカーならまだしも、アジア人の若者が一人でこんなことを国境で喚いているものだから、すぐに人だかりができてくる。

 

その中からバイタクのおじちゃんが

 

「バスの出発所まで10ドルで行ってやるよ、どうだ?歩いたら3キロだぞ。」

 

と聞いてきた。

 

人が困っていると思って、足元を見てきている。

 

「10ドルなんて払えない!3キロなら歩くからいい。」

 

そう伝えて歩き始める僕。

 

それでもひつこく付きまとうバイタク。

 

「いくらだったら払うんだ?」

 

そう聞かれてすかさず、バイタクを睨みつけてこう答えた。

 

「1ドル」

 

お前、どんな頭してんだとかクレイジーなアジア人だななんて散々捲し立てられたけど、結局僕の根気勝ち。

 

1ドルでバスの発着所まで連れて行ってもらうことになった。

 

散々東南アジアで戦ってきたのだから、こんなところでは負けない。

 

きっと相手には失敗したと思われただろう。

 

バックパックを抱えて、バイクに跨る。

 

もちろんノーヘル。これも東南アジアなら当たり前のこと。

 

10分も走らないうちにバスの発着所へ到着。やはり10ドルもかかるわけがない。

 

発着所へ着くなり、チケットカウンターへ直進。

 

「一番早く出発するシェムリアップ行きのバスは何時?」

 

そう聞くと、

 

「次は16時だね。お客さん、あと3時間以上あるけどここで待つの?」

 

そう、この時はまだお昼を少し回ったばかり。

 

もっと早く行く方法はないのかと聞いても、それなら個人的にタクシーを探せとのこと。

 

じゃあタクシーはいくらなんだと相場を聞いたら、48ドルだという。

 

バスの約5倍の値段。

 

もちろん手が出るはずもなく、バスを待つかと諦めた瞬間、後ろの方から鈍った英語で声をかけられた。

 

「君もシェムリアップに行くのかい?それなら私たちと行かないか?」