「日本人はもっと自分のことを鍛えるために、努力するということをしなければいけないです。」
全日本大会優勝経験6回。福祉教育功労賞受賞(2008年日本武道総合格闘技連盟から)など輝かしい経歴を誇る秋山賢治先生。
現在はタイ・バンコクにおいてご自身の空手塾を経営され、さらに武道を通して子供の教育をするといった活動もされている方です。
今回、秋山先生の教育論やご自身の経験、現代の日本人の若者に伝えたいことについてお話しをお伺いいたしました。
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鈴木:現在のお仕事内容について教えていただけますか?
秋山:空手から始まり、格闘技全般の指導です。そして子供には礼儀だったり、ごく当たり前な常識など、例えばあきらめないことだとか僕なりには教育に役立つことを教えています。
鈴木:道場の生徒さんたちは日本人の方が多いんですか?
秋山:現在は日本人のお子さんが50%、そして日タイのハーフであったり、他の国のお子さんたちも通って頂いています。ちなみに生粋のタイ人はほとんど来ないですね。
鈴木:やはりタイといったらムエタイなんですか?
秋山:いや、タイ人の子供はムエタイをほとんどやらないです。彼らはテコンドーですね。タイではテコンドーがすごく普及していて、オリンピックのメダリストもタイから出ていますからね。
鈴木:そうなんですね!タイといったらてっきりムエタイもやるものだと思っていました。
秋山:実はムエタイのいうのは、貧困層の子供が成り上がるためにやるものなんですよ。だから一般家庭の子供でムエタイをやっている子はあまり多くはないんです。
武道を通して、教育を考える
秋山:道場以外の仕事ですと、問題児とか引きこもりの子供を引き取って、面倒を見るというのもやっています。
鈴木:それはタイ人のですか?
秋山:いや、日本人のお子さんですね。ディヤーナ国際学院と連盟を組んでいまして、日本に住んでいるお子さんでそういった方を対象にして、私のところでも見させて頂いています。あと今後学童保育も私のところで始めるんですね。小学生くらいのお子さんを一日単位からお預かりして、こちらで宿題なども面倒を見て、身体を使った遊びなどもして、基礎的な礼儀なども教えてあげる場を作ります。これも先ほどお話したディヤーナ国際学院の経験から、自分の会社で立ち上げようと思ったんです。人間はやはり子供の頃の教育というのが、その人の人格を形成する上でとても大切な時期になるんですね。なのでその時期に人として当たり前の考え方や、物事の捉え方というのを教えたいなと思うんです。
鈴木:秋山先生が子供の教育に対して、そこまで情熱を持っているのはなぜなのでしょうか?
秋山:実は、僕の家庭環境かめちゃくちゃ悪かったんです。親が離婚して、両親が失踪したりしたんですよ。それで僕も家出を繰り返していたんですが、そこで道を踏み外さなかったのは武道があったからなんです。僕は剣道から空手の道に入っていったんですが、僕の根底に武道家とはどうあるべきかという考えがあったからこそ、道を踏み外さなかったんですね。
いじめとかっていうのは、自分の持っているエネルギーをどう使えばいいかわからなくて、人に対して暴力をふるってしまうなんてことも理由の一つなんです。でも、そのエネルギーを武道を通して使う場所を作ってあげる。さらに言うと、あまり社会に馴染めなかった人が社会から認められたいからチャンピオンになる!とかそういう風に移行もしていけるんですね。こういったことって今の子供たちには間違いなく必要だし、有効なことだろうって思うんです。
あと格闘技とかをやっていると、常に「死」というものを意識するんですね。僕は今45歳になりますけど、ちょっとした焦りがあるんです。というのは、身体を動かして働けるのは多分あと10〜15年くらいだと思います。でも自分が死ぬ時に「あ、自分はこれだけのことをしたから満足に逝けるな。」って思うのは、他者貢献じゃないのかと思うんですね。もちろんボランティアでやるっていうのは、永続的にできることではないので、僕の場合はそれを職業にしたんです。なので今の職業を最大限生かして他者貢献をして、そして他の人も多少なり良い方向に向いてくれれば僕も満足できるなぁと思いますね。
あと一つ伝えたいことがあって、子供っていうのは親の背中を見て育つんです。僕の道場でもいらっしゃるんですが、親子で入門して親だけ先に辞めてしまうというのは本当に良くないと思います。親は生き方の選択肢を与えられているから簡単に辞めても、子供に対しては習い事を続けろって言いますよね?でもそれは無理な話なんですよ。口には出さなくても、心の中では「なんでお父さんはやっていないのに僕だけやらなければいけないの?」って思ってますからね。逆に週一回でも親が頑張っている家族なんかは、子供も絶対に辞めないです。やはり親が自堕落な生活をしていたり意識がしっかりしていなかったら、子供は真っすぐ育たないんですよ。
これから海外で戦っていくだろう子供たちの後押しをしてあげたい。
鈴木:秋山先生はなぜタイに移ってきたんですか?
秋山:元々、新規開拓というか新しいことをどんどん挑戦していきたい性格なんですね。私は禅道会という空手団体に所属しているんですが、2007年にタイにセミナーで来たんです。タイに住んでいる日本人の駐在の方だとかそのお子さんに向けたセミナーです。その時にバンコクがすごく居心地が良かったというのが理由の一つと、当時は500人規模の道場を広島で教えていたんですが、その時から私自身日本人はもっと海外に出ないとだめだなーと感じていたんです。なので実際にバンコクでセミナーを行ってみて、海外にいる日本人を鍛える手助けがしたいということと、これから海外で戦っていくであろう子供たちを指導する人間として海外で頑張りたいと思ったんです。
鈴木:タイにいらっしゃってから苦労したことはなかったんですか?例えば言語とか?
秋山:んーそうですね。言葉では全然苦労しませんでしたね!笑 こちらに来てから3ヶ月ほど学校に通ったんですが、2000単語ほど頭に叩き込んだらそれからは話せるようになりましたからね。むしろ僕としては楽しかったですよ!
まぁ苦労したこととはちょっと違うのかもしれないですが、日本で仕事をしていた時は自分の仕事内容に圧倒的な自信があってやっていたんです。でもタイで自分で道場を起こすってなった時は今までに感じたことのない不安がありましたね。私が今まで日本でやってきたことが、タイでも通用するのか分からなかったので。本当に人生であれほど不安を感じたのは初めてでした。でも、当時僕は生徒に指導もして、自分の練習も思い切りやって、修行僧のような生活を送っていたんです。本当に馬鹿真面目に毎日頑張って努力していたんですね。そうしたら周りの仲間や友人が本当にサポートしてくださって、ここまで大きな道場に成長させることが出来ました。
今日本人に必要なことは、努力をするという行為。
鈴木:私はこのインタビュープロジェクトを通して、日本人の若者にもっと海外に出て欲しいと考えています。先ほど秋山先生も日本人はもっと海外に出た方がいいと仰っていましたが、その点について何かご意見はありますか?
秋山:私の意見ですが、日本の最大の資源は人材だったと思うんです。もうすでに「だった」という風になってきてしまっているんですね。日本人がタイ人のことを話す時って、タイのイメージから話されるので、道端で屋台の料理を売っているようなあまり学業をしてこなかった方々のことを指すことが多いです。でもタイ人で大学卒の方っていうのは、タイ語、英語、さらにもう1ヶ国語なんていうのはザラです。それに加えて自分の考えをプレゼンを通して発言できるんですね。同じ年代の日本人を見たら、それが出来る大学生ってどれだけいますか?海外に出る上で英語などの語学を学ぶことはもちろん大事です。でも日本人はもっと、自分のことを鍛えるために努力するということをしなければいけないですよ。ただ一つ誤解して欲しくないのは、海外に出るということを逃げ道にするのはだめです、海外はチャレンジをする場所なんですよ。正直海外に出る方が大変で、ハイリスクハイリターンでもあると思います。でも実力をつけるためにはチャレンジをするという気持ちをもって、リスクから逃げないということが大切だと思います。挑戦する気持ちを持ったら、甘さを捨ててやり抜いて欲しいです。
鈴木:秋山先生ありがとうございました。やはり何か目標を決めた時に、そこに向かって努力するという行為が今の若い世代には必要なのですね。私自身も秋山先生のお言葉を体現できるように、自分のプロジェクトをやり抜きたいと思います!
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