「弊社ではスマートフォンを使ったマーケティングリサーチを行っています。今まで1ヶ月かかった調査が、3日で調査可能になりました。」
そう語るのは、株式会社Asia Plus CEOの黒川賢吾さん。
Sonyやユニクロなどの大手企業で海外のプロジェクトマネージャーを務められた後、ベトナムにて起業されました。
海外の様々な国で働いてきた経験を持つ黒川さん。
なぜ企業を離れ、会社を起こそうと思ったのか、仕事をする場としてアジアを選んだ理由、海外で働くことについてのご意見についてお話を伺いました。
(以下敬称略)
人生の終わり方を考えた時に、自分は起業をするべきだと感じた。
鈴木:本日はよろしくお願いいたします。まずは黒川さんのご経歴についてお伺いできますか?
黒川:はい。元々はSonyに10年務めたのですが、当時は海外のプロジェクトマネージャーとして、今は懐かしい「写メール」を海外で流行らせようとしたり、その後イギリス、アメリカ、シンガポールにて、各地での商品の価格や生産量を決めるマーケティングなどを行っていました。
その後ユニクロに移りまして、ヨーロッパにてTシャツのマーケティングを1年半ほどやらせていただきました。
鈴木:会社員時代から海外でのお仕事に深く携わってきた黒川さんですが、元々海外で仕事をすることに興味があったのでしょうか?
黒川:そうですね。私の場合、小学校の頃から将来は海外で仕事をしたい!と思っていまして、算数や理科は全然だめだったんですが、英語だけは得意だったんです。ずっと独学で英語は勉強していたので、高校生くらいの頃には大分英語も話せるようになっていたんですよ。なので元々の海外志向は高かったですね。
鈴木:ちなみに欧米人のようなキャリアステップを踏まれている黒川さんですが、そういった部分は海外に影響されているんでしょうか?
黒川:いや、そこはただ単に飽きっぽいだけです。笑 全然影響されているとかではないですね。笑
鈴木:Sony、ユニクロという日本の大企業、そしてご希望されていた海外での仕事を担ってきた黒川さんですが、起業しようと思ったきっかけというのは何だったのでしょうか。
黒川:起業のきっかけですが、私自身Sony時代に40代でSonyの関連会社の社長になりたいと考えていたんです。ただ実際に社内を見渡してみると、40~50代の人ってめちゃくちゃいるんですよ。笑 自分の力不足もありましたし、これは難しいなぁという風に考えまして、やはりもう一度海外を見ることができる職場で働こうと思い、ユニクロに転職しました。
そこでは自分に足りていない部分などをさらに学びながら働いていたんですが、会社の歯車として働くのも良いなぁと思っていたんです。歯車というと言葉は悪く聞こえますが、大きなものを動かす時には、小さい歯車が力を合わせないと大きなものは動かないじゃないですか。だから歯車という表現も良いなと感じていたんですよ。
ただ実際に40代に差し掛かる時に、自分のこれからのキャリアをもう一度考え直しました。当時、私はコーチングの授業に通っていたんです。そのコーチングの先生に常々言われていたのが、自分が死ぬ時に、墓標になんて書かれたいか考えなさいということでした。
その時に私が思ったのが、墓標には「アジアの為に頑張りました。」って書いて欲しいなと思ったんです。
自分の気持ちに正直になって考えた時に、アジアという場所で、自分ができること・自分がやりたいこと・社会の役に立つことをやろうと思ったのが、起業をしようと思ったきっかけです。
鈴木:アジアのために頑張りたいと思ったのはどういった理由だったんでしょうか。
黒川:今までの経験の中で、アジアの人たちと仕事をしていく中で、嬉しいと思う瞬間とか努力をしている瞬間とかの価値観がすごく似ているなと感じていたんです。今までアメリカの方や英国の方とも仕事をしてきましたが、アジアの方たちと仕事をしていく瞬間の方が似た価値観を共有しながら仕事ができるので、それが面白いなというのがまず理由の一つ。
そして二つ目は、日本がこれから世界の中で存在感を出していくためには、まずアジアの中での日本というものをアピールした方が良いのではないかと考えたことです。世界というスケールで考える前に、まずは日本が属しているアジアという場所でしっかりと日本人の仕事の仕方だったり、生活の仕方だったり、そういった良い部分でアジア諸国に良い影響を与えられるくらいの存在に成長すべきだと考えたためです。
スマホを活用することで、マーケティングリサーチに強みを持たせることができる。
鈴木:事業内容として選んだのがマーケティングというのは、どういった理由だったんでしょうか。
黒川:Sony・ユニクロ時代に海外で自分たちの商品をどのように広めてどのように売っていくかというマーケティングがものすごく難しかったんです。実際に日本企業が新興国などに進出する際の課題として、自分たちの商品は良いものという自信があっても、それをどう売ったらいいかわからないという企業が圧倒的に多いんですよ。
Sony時代のライバルがSamsungだったんですが、彼らのマーケティングへの力の入れ方が凄く、いつもシェアで負けているような状況だったんですね。例えば洗濯機を売る場合、彼らは何ヶ月もかけて現地の人の生活を調査してそこに合う商品を作るのですが、Sonyの場合は担当者が一週間なんていう短い期間でお店を回るだけなんていうこともザラで、そこでマーケティングというものの重要さと面白さを学んだんです。
そしてアジアでのマーケティングリサーチというものをITを使ってやっていこうと思ったことが理由になります。
鈴木:ITを使ったマーケティングリサーチというのはどういったものですか?
黒川:元々ベトナムにあるリサーチ会社の多くは、そのリサーチ方法が電話だったり直接訪問だったりで、莫大な費用と時間がかかっていたんです。しかしながら、実際に担当するのはアルバイトのお姉さんだったりして費用がかかる割に、調査結果がそれほど充実したものではなかったんですよ。
その点を私たちはスマホでリサーチをする方式にしました。スマホでアンケート(リサーチ)に答えて頂くと、ポイントが貯まるような仕組みとなっています。このリサーチ方法をスタートして一年ほどになるのですが、現在このアンケートの回答者さんが約10万人ほどになりました。弊社の強みとしては、今まで競合会社が1ヶ月かけて調査した内容を弊社でなら2~3日ほどで調査することが可能だということです。
また、スマホを活用する強みとして写真や動画を撮影できるという点が挙げられます。ですので、例えば化粧品の調査であれば実際に使用しているところの写真を撮って頂いて、こちらは実際に使用している方の様子をビジュアルを使って確認できるといったことも可能になりました。
鈴木:マーケティング依頼をしてくる会社というのは、日系企業が多いのでしょうか?
黒川:そうですね。現在はまだ日経企業からの依頼が大半を占めているため、今後の課題としてはいかにベトナムのお客様に弊社のサービスを浸透させていくかということになります。ただ、弊社が行っているのが単なる既存サービスの代替えではなくて、スマホを使っているからこそ展開できるユニークなサービスという強みがありますので、そういった点を突き詰めていけば今後市場にて勝てる要素はあると思います。
海外に出ることは、「違う」を知るということ。
鈴木:前職を含め、現在も海外にてご活躍される黒川さんですが、現在日本人の若者が海外離れをしている現状という点についてどう考えられますか?
黒川:基本的にはそれぞれの好き好きで良いんじゃないかなぁと思います。笑
ただ、違う文化や違う考え方を持っている人のコミュニティに飛び込むことで圧倒的に視野は広がると思います。日本人の中の常識と外国人の常識は違うということを知ることによって、どっちが良いか悪いかではなく、こういう考え方があるのかといったことや自分と同年代の人がこういった暮らしをしているだと学ぶことができますよね。
「違う」ということを知ることや経験することによって、自分もこういう考え方をしてみようとか自分もこういう仕事をしてみようというように、考えが広がる機会があることは間違いないかと思います。
ですので私の考えとしては、「飛び込む」、「飛び込まない」という選択肢があるならば私はそこに「飛び込む」べきだなと思います。
鈴木:最後の質問となりますが、今後の目標について教えていただけますか?
黒川:「Asia Plus」という名前の通り、アジアに付加価値を提供できる会社にしていきたいと思っています。まずはベトナムという場所にて、このユニークなマーケティングリサーチの方法を確立させて基盤を作っていきます。その後はタイやインドネシアという風に、アジア全体で勝負ができるようになっていきたいと思います。
鈴木:スマホを活用したマーケティングリサーチ、今後さらに需要が増えそうですね。楽しみです!本日は貴重なお話をありがとうございました。
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