「もうロンドンに住み始めて25年が経っちゃったよー。」
朗らかな笑顔でそう語る加藤さんは、あと数年で70歳。
ハツラツとされていてお酒も嗜むし、とてもそんな年齢には思えない。
25年前にロンドンに住み始めて、ロンドンの住宅を支えてきた。
加藤さん(左)と滞在中、お世話になった福原くみさん(右)
福島県出身の加藤さんは、学校を卒業後、東京の義兄の貿易会社で働いていたという。
営業マンとして一生懸命働いていたが、個人の会社だし貿易業界の先行きはわからなかった。
そんな時に、義理のお兄さんが家族のためにロンドンに家を購入することになり自分もイギリスという国へ興味を持ったという。
気がつけばイギリス行きのチケットを握りしめて、ロンドンへと向かっていた。
もちろん英語は達者ではないし、知り合いもほとんどいない。
でも
「なんとかなるだろう。」
その思い一つだけで海を越えていった。
趣味だった日曜大工
イギリスへ来たのは良いが、仕事は決まっていない、そして何をしたら良いかわからなかった。
そんな時に加藤さん自身を助けたのは、ご自身の趣味だった。
「元々ね、日曜大工が好きでそれに日本では住宅の電気配線に関する資格も持っていたんですよ。」
イギリスの家に住み始めた時に、そこの住宅の電気配線がいかにいいかげんかが目に付いた。
しかも日本のものと比べたらシンプルな構造、加藤さん自身でも少し見れば直せるようなもので、その分野が自分の仕事となった。
日本人の仕事のマメさ
イギリスでワーカーズと呼ばれる電気や水道などの修理業者に依頼をすると、日時を指定したところでその時間には来なかったりする。
例えば朝7時から夜7時までの間に家に伺います、なんて連絡が来るが、結局その日には業者が来ずに1日待ちぼうけになったなんてことも多いという。
加藤さんは依頼をした日時に、オンタイムで現れる。
日本人なら当たり前という感覚かもしれないが、この国ではそれが本当に喜ばれた。
さらに言うと、ロンドンへ来たばかりの日本の駐在員からは重宝された。
多くの人が玄関を開けた時に、
「あ、日本人の方なんですね!」
と驚きと安堵が入り混じった声を出すという。
ロンドン生活が始まって不安が多い駐在員からしたら、日本人に家のことを任せられるのは本当に嬉しいのだろう。
日本人ということのスキル
ビジネスの世界において、日本人はなかなか海外で通用しないと言われている。
語学ができないため発言ができず、自分の考えや態度をしっかりとアピールすることが下手だと言われている。
しかしながら、日本人だって海外に誇れる部分がある。
日本人は生活していく中で、いつの間にか時間を守るといったことや、仕事の正確さ丁寧さなどを身につけている。
よく海外の人に言われるのは、日本人と約束をすると、時間通りに待ち合わせ場所に来るから、自分たちも普段より時間を気にしてしまうと思うとのこと。
知らず知らずのうちに、ビジネスにおいて喜ばれるポイントは身につけているのだ。
「海外で仕事がしたいんですが、自分は何ができるかわからないんです。」
僕のところに、たまにこういった質問が来ることがある。
そういった時に、僕は上記に挙げたことを伝える。
確かにこれだけでビジネスが全て上手くいくとは言えない。でもまずは、あなたもこういったことは出来るはずですよっと気が付いてほしいのだ。
語学力、プレゼン力、マネージメント力、etc。
様々な要素が絡まりあって、ビジネスができる・できないは線引きされる。
でもまずは日本人としての強み、そして海外から喜ばれるポイントというものを日本人のそれぞれが知って欲しいと思う。