インタビュー-アジア

【INTERVIEWS】SocialCompass代表 アートディレクター 中村 英誉さん

SocialCompass代表、株式会社HIDEHOMARE代表取締役 中村 英誉さん。

カンボジア・プノンペン在住、アートディレクターとしてご活躍されています。

 

大学卒業後すぐに、単身渡英。

同国アニメーションスタジオにて勤務後、日本の有名アニメーションスタジオを経験、そして独立。

 

ノマドワーカーとしてカンボジアを転々とするスタイル、なぜカンボジアを仕事をする場として選んだのか、そして中村さんご自身の目標などについてお伺いしました。

留学をする予定が、そのまま就職へ。。。

鈴木:早速ですが、まずは中村さんのご経歴を教えていただけますか?

 

中村:はい。学生時代は美術大学に通っていまして、映像を学んでいました。

大学卒業後は、ロンドンのアニメーションスタジオで3年ほど働き、その後日本の企業に転職、退職後にフリーランスとなりました。現在はカンボジアを拠点に活動しています。

 

鈴木:大学を卒業後、すぐにロンドンで働くことになったきっかけというのはなんだったんでしょうか。

 

中村:実は日本の大学卒業後に、ヨーロッパに留学しに行こうとしていたんです。ヨーロッパの中だとチェコがアニメーションで有名なんですね。なのでそこで学びたいと考えていたんですが、全然お金が無かったんです。笑

そんな時に大学の教授に紹介してもらったのが、ロンドンのアニメーション会社だったんですよ。お金がなくて留学もできそうになかったため、それならここで働こうと思い就職を決意しました。

 

鈴木:当時語学はお得意だったんですか?

 

中村:それが全然だめだったんです。行く前は、「とりあえず行ってみたらなんとかなるでしょ!」なんて考えていたんですが、そんなことには全くならなかったです。笑 会社の周りの方達に本当に助けてもらいましたね。あとは絵がある仕事なので、絵コンテを描けば会話にはなるんです。自分が描いた絵を通して、自分の考えを伝えることができますからね。

 

鈴木:ロンドンで働かれた後は日本にお戻りになったんですよね?それは何か理由があったんでしょうか?

 

中村:私は当時27歳だったんですが、30歳手前になって日本人なのに日本で働いたという経験がなかったんです。大学を卒業後そのままイギリスで就職してしまいましたので。

周りの人からすると、そこまで気にすることなの?なんて言われますけど、やっぱりいい年して日本で就労したことがないっていうのは、個人的に嫌だったんですよ。

なので、一度日本に戻ってきてベンチャーのアニメーション会社で働きました。「鷹の爪」ってアニメ知ってますか?私はそのアニメを作成している会社で働いていました。

 

鈴木:鷹の爪!!もちろん知ってます!とても有名じゃないですか!

 

中村:ありがとうございます。そこで1年ほど働いていたんですよ。

 

鈴木:そしてその会社を退社後にフリーランスになられたんですよね?

 

中村:そうですね。フリーランスで活動しながら、当時流行り出したiphoneアプリのデザインについてスクールに通っていました。現在ではデザイナーがアプリデザインを担当するのも一般的となりましたが、その当時はまだまだそういったことがなかったんです。一応先駆け的な存在として、様々な企業様、例えば東大初のベンチャー企業や大手玩具メーカー様等とお仕事をさせていただいていました。

 

自分のルーツはカンボジア。

そのカンボジアに恩返しがしたい。

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鈴木:なんだか日本でのお仕事をとても満喫されていたように聞こえますが、どういった理由でカンボジアに移ろうと思われたんですか?

 

中村:それはカンボジアが僕の仕事のルーツになっていて恩返しがしたかったこと、そしてそのカンボジアでビジネスパートナーを見つかったという理由からですね。

 

実は私、元々カメラマンになりたかったんです。写真一枚で人々を幸せにするなんて、なんて素晴らしい職業だろうって思っていたんですよ。ただその考えが変わったのがカンボジアでした。

 

15年ほど前、まだ学生だった頃に初めてカンボジアに来たんです。その当時はまだ今ほど街は整っていなくて、雰囲気もまだ暗くて怖かったのを覚えています。

ある夜、お腹が空いて屋台のヌードルを食べに行ったんです。その時に屋台のお母さんが僕に話しかけてきたんですが、自分のことを「みさえ、みさえ」といって自分の子供と交互に指差してきたんですよ。最初は何のことかわからなかったんですが、よくよく聞くと日本の「クレヨンしんちゃん」のことを言っているということが分かったんです。自分の子供がワンパクで、自分はいつもガミガミしているから「みさえ」と言っていたみたいなんです。

この時に「クレヨンしんちゃん」というアニメが国境を越えて、外国の人にも親しまれていると知ったことが衝撃でした。実は私はそれまで、アニメというものには批判的だったんです。私の勝手なイメージで、アニメというものはオタクで根暗な人が見るものだと思っていたんですよ。しかしながらこの出来事で考えが大きく変わりましたね。それからは写真ではなく、アニメというものを通して人を幸せにしたいと思うようになったんです。

 

その出来事から10年以上経って、自分のルーツとなったカンボジアに何か貢献できる仕事がしたいなと思っていたんです。そんな時にちょうど、カンボジアでビジネスパートナーとなってくれる方が見つかったんですよ。本当に偶然でしたが、そういったことがあってカンボジアへと来ることが決まりました。

 

鈴木:今はカンボジアでどんな内容のお仕事をされているんですか?

 

中村:現在はカンボジアの子供向けのキャラクターコンテンツを手がけることが多いです。日本とカンボジア、どちらからもお仕事を頂いていますね。最近ではJICAとカンボジア教育省の共同プロジェクトで、カンボジアの子供たちに体操を教えるためのアニメーションを作成したり、カンボジア版ゆるキャラの「アンコールワッティー」を社会貢献の一環としてデザインさせて頂いたりしています。

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最初にお話した体操のアニメーションについては、実はこの体操はクメールルージュ以前にはカンボジアで一般的に踊られていたものだったんです。ですが、クメールルージュによって伝統が途切れてしまったため、こうやって体操のアニメーションを作成して子供たちの世代に教えようとしているんです。

 

鈴木:中村さんがデザインされたキャラクターによって、カンボジアへの社会貢献や子供達への教育促進に繋がっているわけですね!

 

変化する生き物が生き残っていく。

鈴木:現在日本人の若者が海外離れをしていると言われていますが、その点について中村さんのお考えを教えて頂けますか。

 

中村:突然ですが、鈴木さんはユダヤ人のお知り合いっていますか?

 

鈴木:ユダヤ人の知り合いですか?僕は、、、、いないですね。

 

中村:僕はイギリス時代に何人かユダヤ人の友人ができたんですが、やはり彼らは仕事をする上で優秀な方が多いです。じゃあなぜ彼らが優秀だと言われるのか?と私なりに考えたんですが、それはユダヤ人の移動距離なんじゃないかと思っています。

 

鈴木:移動距離ですか?

 

中村:彼らは大昔からずっといろいろな土地を移動して、その変化する環境に適応し、その過程で人種的に成長していったんですね。またダーウィンも進化論の中で、「変化する生き物が生き残る」という風に話しているんです。

 

今まさに日本の若者に伝えたいことは、「生き残るためには変化が必要」ということです。ただ勉強をするとか一生懸命働くとか、それだけでは実際に成長するというのは中々難しいんじゃないかと思います。

 

そこでやはり先ほどお話したユダヤ人のように、いっそ自分がいる環境を飛び出して移動をしてみればいいのではないかと思います。異なる環境に飛び込むことになれば、適応するために自分が変化する必要があるし、また今以上に自分が持っている能力を欲してくれる環境があると思います。

 

私としては、そういった意味で海外に飛び出すという選択肢は大いにお勧めしたいと思います。

 

鈴木:「変化をする中で成長する。」確かに日本人全体を通して必要なことのように感じますね。

 

最後の質問になりますが、中村さんの今後の目標を教えてください。

 

中村:日本人の仕事や生活の仕方に、今までとは違うアイディアを与えていくことですね。

 

鈴木:違うアイディア、具体的にはどういったことでしょうか?

 

中村:私はノマドワーカーという言葉が流行する前からフリーランスとして活動してきました。今日本に住む方々に伝えたいのは、会社員として働くということだけが人生の選択肢ではないということです。

 

私は個人的に、日本の経済が現在良い状況であるとはとても言いきれないと思います。

実際に、絶対にここは大丈夫だろうと思われていた大企業がことごとく経営危機に陥っていますよね。

 

一昔前のように、大企業に就職さえすれば絶対に今後は安心だとは言えないということです。もちろん全ての人が、個人で仕事をしていけるとは考えていません。

しかしながら、学校を卒業したら会社に入って定年まで働き続けるという考えだけが全てではないと伝えたいです。

 

これも「変化」です。

 

私自身の仕事や生活を通して、今までと違った働き方、考え方、生活の仕方を用いることも大切なんじゃないかということを、日本の方々にお伝えしていきたいと思っています。

 

鈴木:ありがとうございます。実際に「移動」されて「変化」をされている中村さんが仰ると説得力がありますね。私も変化できる人間になれるように努力していきたいと思います。本日はありがとうございました!